ノーベル賞はダイナマイトの発明により富を得たアルフレッド・ベルンハルド・ノーベルが遺贈した基金から創設されたものです。
1901年に始まり、偉大な発明や取り組みをした人に贈られています。
医学生理学部門は王立カロリンスカ医学研究所が賞の授与機関になりす。
2009年のノーベル医学生理学賞
米カリフォルニア大のエリザベス・ブラックバーン教授、
ジョンズ・ホプキンズ大のキャロル・グレイダー教授、
ハーバード大のジャック・ゾスタック教授
の3氏が受賞しました。
ノーベル賞の受賞理由
受賞理由は「寿命のカギを握るテロメアとテロメラーゼ酵素の仕組みの発見」でした。
ブラックバーン教授は、テロメアを「靴ひもの先端」に例えています。
テロメアは染色体の末端に付いているキャップのようなものです。
それは、遺伝情報を保護する役目を担っています。
靴紐の先端の止め具がなくなると、紐の糸がばらばらにほどけてしまうのに似ています。
テロメアとは
染色体の末端にあり、特定の塩基配列の反復とタンパク質から成る構造物です。
細胞分裂をするたびにテルメアは短くなり、細胞の複製時の際にエラーが起こったりDNAが損傷するのを防ぐ働きがあります。
動物、植物など、細胞の中に細胞核をもつ真核生物にだけ存在します。
哺乳類では、テロメアにTTAGGGという塩基配列になっています。
ヒトの場合、1万回以上TTAGGGという塩基配列が繰り返されています。
1回の細胞分裂で、TTAGGGという塩基配列が25~200ずつ減少します。
そして、5000ぐらいまで減ると細胞が分裂しなくなります。
そのため、ヒトの体細胞が分裂できる回数はおよそ50回から70回までとなります。
これを超えると増殖せず細胞老化という状態になります。
年齢を重ねるにしたがってテロメアが短くなっていく事になります。
それにより、生体の寿命にも関連しているとのではないかと考えられています。
塩基配列とは
核酸を構成する塩基部分の配列を言います。
TTAGGG…というふうに略号を並べて表します。
(Aはアデニン,Tはチミン,Gはグアニン,Cはシトシンの略号です。)
テロメアではTTAGGG(チミン,チミン,アデニン,グアニン,グアニン,グアニン)になります。
テロメラーゼ酵素
テロメアが短くなってもテロメラーゼという酵素が活性化していれば、TTAGGGという塩基配列を継ぎ足して、細胞は分裂することができます。
しかし、成熟したヒト体細胞にはテロメラーゼがないか、あっても非常に活性が低いのです。
一方、生殖細胞や胚性幹細胞(ES細胞)のテロメラーゼは活性度が高く、テロメアの長さを維持して増殖し続けることができます。
また、ほとんどのがん細胞はテロメアが通常の体細胞に比べて短いのですが、テロメラーゼが大量に存在するため、テロメアの活性度は高いのです。
がん細胞が無限に増殖を繰り返すのは、このためだと考えられています。
テロメラーゼを不活化することによって、がん治療する薬の開発が進められています。
エリザベス・ブラックバーン博士らは、1978年にテロメアの反復配列の存在を報告します。
その後テロメラーゼを単離し、その働きを明らかにしました。
その業績で、2009年にノーベル生理学・医学賞を受賞したのです。
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テロメアと生活習慣
2017年にエリザベス・ブラックバーン博士らが、生活習慣とテロメアの関係についての研究成果をまとめた本を今年出版しました。
ブラックバーン博士らが紹介しているのは
「心理ストレスにさらされていないか」
「睡眠を十分にとっているか」
「適度な運動をしているか」
「健全な食事をとっているか」
といったこととテロメアの状態の関係を調べています。
睡眠に関しては、
毎日5~6時間しか眠っていない高齢者のテロメアは短い傾向があるが、
7時間以上睡眠をとっている高齢者の場合は、中年の人と同じかそれ以上の長さだった。
運動については、
過去10年間、運動習慣のある人は、そうでない人と比べてテロメアが長かった。
特に強調しているのが、ストレスとの関係。
ストレスを除くのにマインドフルネスと呼ばれる瞑想(めいそう)が注目されているが、この瞑想をしたグループは、テロメアが伸びたという研究成果を紹介している。
まとめ
適度な運動や適切な食生活をする。
良質な睡眠を獲得する。
ストレスをためない。
いずれも健康・長寿の秘訣とされてきました。
テロメアに注目することで生活習慣と健康状態や病気との関係がより明確になりそうです。
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テロメラーゼ酵素は健康に寄与する素材として活用され始めています。
若返りを促進するサプリに活用され、若返りの特効薬になるかも知れません。
それには今少し時間が必要でしょう。