成元年5月の連休もあっという間に終わってしまいましたね。
お子さんのおられるご家庭ではほっと一息ではないでしょうか。
これから暑くなるシーズン体調管理が重要になってきますね。
特に食中毒に気を付けないといけません。
そんな中少し怖いニュースが報道されています。
東京で男性がSFTS=重症熱性血小板減少症候群に感染が判明!
熊本で91歳の女性が日本紅斑熱で亡くなりました。
どちらもマダニが関与するものです。
目次
報道
東京都内に住む50代の男性が、マダニが媒介するウイルス感染症にかかっていた。
都内で患者が確認されるのは、初めてだということです。
東京都によりますと、
感染したのは都内に住む男性(50代)で、今月1日から5日にかけて長崎県を旅行中に、
SFTS=重症熱性血小板減少症候群のウイルスを持つマダニにかまれたようだ。
男性は発熱や下痢、意識障害などの症状を訴え重症です。
現在、都内の病院に入院しています。
SFTSは感染すると重症化し、死亡することもあります。
西日本を中心にこれまで404人の患者が報告されています。
2013年に国が感染症に指定して以降、都内で患者が確認されるのは初めてだということです。
SFTS=重症熱性血小板減少症候群のウイルス
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は、マダニに咬まれることにより感染するダニ媒介感染症です。
感染症法では四類感染症に位置付けられています。
⑴ 病原体
ブニヤウイルス科フレボウイルス属の重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome : SFTS)ウイルス
⑵ 感染経路
主にSFTSウイルスを保有するマダニに刺咬されることで感染する。
⑶ 潜伏期
6〜14日
⑷ 症状:
発熱、消化器症状(嘔気、嘔吐、腹痛、下痢、下血)の症状です。
ときに、腹痛、筋肉痛、神経症状、リンパ節腫脹、出血症状などを伴うこともあります。
致死率は10〜30%程度といわれています。。
⑸ 診断:血液、血清、咽頭拭い液、尿から病原体や病原体遺伝子の検出、 血清から抗体の検出
都内初のマダニによる感染
SFTSの患者は、西日本を中心に発生していますが、今回初めて都内で発生しました。
感染地域が東日本にも広がってきているようです。
これまでに患者が報告された地域以外でもSFTSウイルスを保有するマダニや感染した動物が見つかっています。
ですからSFTS患者の発生が確認されていない地域でも注意が必要なのです。
SFTS=重症熱性血小板減少症候群とは
2011年に中国において新しい感染症として流行していることが報告されました。
病原体は、SFTSウイルスであることが確認されています。
主な初期症状は発熱、全身倦怠感、消化器症状で、重症化し、死亡することもあります。
日本、中国及び韓国で患者発生が確認されています。
今回話題となっているSFTSウイルスの遺伝子の特徴は、中国の流行地域のSFTSウイルスの特徴とは異なっていました。
つまり、SFTSウイルスは、最近中国から入ってきたものではありません。
以前から日本国内に存在していたと考えられます。
その事実から、患者は日本国内でSFTSウイルスに感染したと言えます。
ウイルスを有するマダニに咬まれることにより感染します。
多くの場合、マダニに咬まれてSFTSウイルスに感染すると考えられています。
しかし、マダニに咬まれた痕が見当たらない患者もいます。
動物からの感染
最近の研究で、SFTSウイルスに感染し、発症している野生動物やネコ・イヌなどの動物の血液からSFTSウイルスが検出されています。
これは、SFTSウイルス感染している動物からヒトに感染するかもしれないと示唆しています。
ヒトにSFTSウイルスを感染させるリスクのあるネコなどは、ヒトのSFTSで認められる症状を呈していたことが確認されています。
しかし、健康なネコなどからヒトがSFTSウイルスに感染することはないと考えられます。
また、屋内のみで飼育されているネコについては、SFTSウイルスに感染する心配はありません。
まれですが、SFTSウイルスに感染し、発症している動物の血液などの体液に直接触れた場合、
SFTSウイルスに感染することがあるかもしれません。
なお、ヒトのSFTSで認められる症状を呈していたネコに咬まれたヒトが、SFTSを発症し、
亡くなられた事例が確認されています。
そのネコから咬まれたことが原因でSFTSウイルスに感染したかどうかは解明されていません。
SFTS以外の感染症に対する予防の観点からも、動物を飼育している場合、過剰な触れ合い
(口移しでエサを与えたり、動物を布団に入れて寝ることなど)は控えたほうが無難です。
動物に触ったら必ず手洗い等をしましょう。
野生動物は、どのような病原体を保有しているか分かりません。
だから、野生動物との接触は避けるのが賢明です。
マダニ
マダニと、食品等に発生するコナダニや衣類や寝具に発生するヒョウヒダニなどは、
家庭内に生息するダニは全く種類が異なります。
また、植物の害虫であるハダニ類とも異なります。
マダニ類は、固い外皮に覆われた比較的大型(種類にもよりますが、、吸血前で3〜8mm、
吸血後は10〜20mm程度)です。
主に森林や草地等の屋外に生息していますが、市街地周辺でも見られます。
日本国内では、複数のマダニ種
(フタトゲチマダニ、ヒゲナガマダニ、オオトゲチマダニ、キチマダニ、タカサゴキララマダニ)からSFTSウイルスの遺伝子が検出されています。
ウイルス保有率は地域や季節によりますが、0〜数%です。
日本紅斑熱、ライム病など多くの感染症もマダニによって媒介されています。
北海道ではマダニによって媒介されるダニ媒介脳炎の患者が発生しています。
また、ダニの一種であるツツガムシによって媒介される、つつが虫病もあります。
日本紅斑熱、ライム病、つつが虫病の年間報告数は、それぞれおおよそ180件、10件、400件となっています。
日本紅斑熱、ライム病、つつが虫病は基本的には抗菌薬で治療されます。
しかし、現時点ではSFTSとダニ媒介脳炎には、有効な治療法はありません。
予防
マダニに咬まれないように気をつけることが重要です。
草の茂ったマダニの生息する場所に入る場合には、長袖、長ズボンを着用し、サンダルのよ
うな肌を露出するようなものは履かないことです。
これは、SFTSだけではなく、つつが虫病や日本紅斑熱など、ダニが媒介する他の疾患の予防のためにも有効です。
特にマダニの活動が盛んな春から秋にかけては、マダニに咬まれる危険性が高まります。
対策
長袖・長ズボン(シャツの裾はズボンの中に、ズボンの裾は靴下や長靴の中に入れる、
または登山用スパッツを着用する)
足を完全に覆う靴(サンダル等は避ける)、帽子、手袋を着用し、首にタオルを巻く等、
肌の露出を少なくする。
服は、明るい色のもの(マダニを目視で確認しやすい)がお薦めです。
虫よけ剤の噴霧
DEET(ディート)という成分を含む虫除け剤の中には服の上から用いるタイプがあり、補助的な効果があると言われています。
確認
屋外活動後は入浴し、マダニに刺されていないか確認して下さい。
特に、首、耳、わきの下、足の付け根、手首、膝の裏などがポイントです。
マダニに吸血された場合には、皮膚科などを受診してマダニを除去してもらって下さい。
感染地域
これまでのところ、SFTSの患者は、西日本を中心に発生しています。
徐々に患者発生が確認された地域が広がっています。
これまでに報告された地域以外でも、SFTSウイルスを保有するマダニや感染した動物が見つかっています。
SFTS患者の発生が確認されていない地域でも注意が必要です。
マダニに噛まれた時の対処法
マダニ類の多くは、ヒトや動物に取り付くと、皮膚にしっかりと口器を突き刺し、
長時間(長いものは10日間以上)吸血します。
しかし、咬まれたことに気がつかない場合も多いと言われています。
吸血中のマダニに気が付いた際、無理に引き抜こうとしてはいけません。
マダニの一部が皮膚内に残って化膿したり、マダニの体液を逆流させてしまったりする恐れ
があります。
医療機関(皮膚科など)で処置(マダニの除去、洗浄など)をしてもらってください。
犬、猫からの感染
SFTSウイルスに感染し、発症したネコ及びイヌが報告されました。
動物がSFTSウイルスに感染した場合、多くは症状を示さない不顕性感染らしいです。
国内において、シカ、イノシシ等の野生動物や猟犬の血液を検査したところ、
SFTSウイルスに対する抗体を持っていました。
これまでの調査で、シカで0〜90%、イノシシで0〜10%程度で抗体が検出されています。
また、イヌでは0〜15%程度で抗体が検出されています。
ネコでは約450頭中いずれも抗体は検出されませんでした。
その他、ある地域のアライグマの28%、タヌキ、アナグマ、イタチ、ニホンザル、ウサギなどで抗体が検出されています。
動物由来食品(肉や乳など)を食べて、ヒトが感染したという報告はありません。
抗体自体に病原性はないので、SFTSウイルスに対する抗体を持っている動物を食べても問題ありません。
ただし、一般的な注意事項として、
野生動物を食用にする場合(ジビエなど)は、動物由来感染症や食中毒を防ぐ観点から、
捕獲・処理・加工する際の衛生的な処理や十分な加熱調理等、適切な取扱いが重要です。
年齢別感染状況
中国では、SFTSの患者の年齢層は30〜80歳代で、全患者の75%が50歳以上との報告があります。
日本でこれまでに確認されたSFTS患者の年齢層は、5歳〜90歳代です。
その内、全患者の約90%が60歳以上です。
亡くなった患者は50歳以上ですので、高齢者は重症化しやすいと考えられます。
2014から2016年の感染症発生動向調査では、届出時点の情報で178名です。
そして、報告のうち35名が死亡しています。
日本でのSFTSの致命率は約20%です。
ペットに付いているマダニに触れたからといって感染することはありません。
しかし、マダニに咬まれれば、感染の危険性はあります。
ペットの対応
マダニ類はイヌやネコ等、動物に対する感染症の病原体を持っている場合もあります。
ペットの健康を守るためにも、ペットのマダニは適切に駆除しないといけません。
ペット用のダニ駆除剤等があります、かかりつけの獣医師に相談してください。
散歩後にはペットの体表のチェックを行い(目の細かい櫛をかけることも効果的です)、
マダニがしっかり食い込んでいる場合は、無理に取らず、獣医師に除去してもらうようにしましょう。
動物の場合も、
発熱、消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)
が出現します。
時に頭痛、筋肉痛、神経症状(意識障害、けいれん、昏睡)、
リンパ節腫脹、呼吸不全症状、出血症状(歯肉出血、紫斑、下血)
が出現します。
日常的な対策としては、ネコはダニの駆除剤等の投与が必要です。
飼い主は、ネコの健康状態の変化に注意し、体調不良の際には動物病院を受診すること。
まとめ
マダニ媒介のSFTSは非常に怖い存在です。
しかし、子供に限ればデーター的には被害者は少ないものです。
2013年から2017年までの報告ですが、20歳までの患者報告は2人です。
逆に注意しなければいけないのは、50歳以上の大人です。
全体の95.7%になります。
子供の心配より親のほうが気を付けないといけませんね。