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老舗企業はどう復活したのか?長谷園「かまどさん」に学ぶブランド再生術

ビジネス
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三重県伊賀市にある老舗窯元・長谷製陶株式会社は、1832年創業の伊賀焼メーカーです。
一時は建築用タイル事業で大きく成長しましたが、1995年の阪神・淡路大震災後、
「タイルは地震に弱い」という風評の影響を受け、経営危機に直面しました。その苦境を乗り越えるきっかけとなったのが、炊飯用土鍋
「かまどさん」です。
この記事では、長谷園がどのようにして危機を乗り越え、人気商品を生み出したのかを、
若い起業家にも役立つビジネス視点でわかりやすく解説します。

長谷製陶株式会社とは?伊賀焼の伝統を受け継ぐ老舗企業

長谷製陶株式会社は、三重県伊賀市で伊賀焼を製造する老舗企業です。
伊賀焼は、耐火性に優れた土と素朴な風合いが特徴で、古くから土鍋や食器などに使われてきました。

長谷製陶は「長谷園」のブランド名でも知られ、現在では炊飯土鍋「かまどさん」をはじめ、
暮らしに寄り添う焼き物を数多く展開しています。

阪神・淡路大震災で売上が急落した理由

長谷製陶はかつて、食器や土鍋だけでなく、建築用タイル事業でも大きな売上を上げていました。
タイル事業は会社収入の大部分を占める重要な柱でした。

しかし、1995年の阪神・淡路大震災後、建築業界では
「タイルは地震に弱いのではないか」という不安が広がりました。
その結果、施工のキャンセルが相次ぎ、長谷製陶の業績は大きく落ち込みます。

これは現代のビジネスでいえば、SNSでの風評被害や市場環境の急変に近い出来事です。
どれだけ良い商品を作っていても、社会の空気が変われば、一気に売上が下がることがあります。

8代目・長谷康弘氏が気づいた「売れない理由」

経営危機の中、家業を立て直すために伊賀へ戻ったのが、後に8代目社長となる長谷康弘氏です。
東京の高校・大学で学び、百貨店勤務も経験していた長谷氏は、外部の視点から家業を見直しました。

そこで気づいたのが、
「商品は良いのに、その魅力が十分に伝わっていない」
という問題でした。

起業家にとっても、これは非常に重要な視点です。
良い商品を作るだけでは、売上にはつながりません。
商品の価値を伝える仕組み、ブランドの見せ方、販売ルートの開拓が必要になります。

「かまどさん」誕生の背景|土鍋ご飯の美味しさを家庭へ

長谷康弘氏と父・優磁氏が挑戦したのが、炊飯用土鍋の開発でした。
目指したのは、昔ながらのかまど炊きご飯の美味しさを、家庭で簡単に再現できる土鍋です。

当時、多くの家庭には炊飯ジャーが普及していました。
そのため、単に「土鍋でご飯が炊けます」と言うだけでは、消費者に選ばれません。

そこで長谷園は、
「美味しいけれど面倒」という土鍋の弱点を解決する商品づくりに取り組みました。

「かまどさん」がヒットした3つの理由

1. 火加減調整がほとんど不要だった

一般的な土鍋炊飯は、火加減が難しいというイメージがあります。
しかし「かまどさん」は、土鍋の厚みや形状を工夫することで、
火加減を細かく調整しなくても美味しいご飯が炊けるように設計されました。

これは、ユーザーの心理をよく理解した商品開発です。
人は「本格的な味」には惹かれますが、毎日使う道具には簡単さも求めます。

2. 二重蓋で吹きこぼれを防いだ

「かまどさん」の大きな特徴が、独自の二重蓋です。
二重蓋によって蒸気を閉じ込め、内部にしっかり熱を行き渡らせることができます。

さらに、吹きこぼれを防ぎやすくすることで、土鍋炊飯の不安を減らしました。
使う人の失敗を減らす設計が、商品の満足度を高めたのです。

3. 伊賀焼の土の特性を活かした

伊賀焼に使われる土は、耐火性が高く、熱を蓄えやすい性質があります。
この特性により、土鍋全体がじっくり温まり、米の芯まで熱が伝わります。

その結果、ふっくらと粒立ちの良いご飯が炊き上がります。
伝統的な素材の強みを、現代の家庭料理に活かした点が「かまどさん」の魅力です。

女性の生活者目線を取り入れた商品開発

「かまどさん」の開発では、長谷氏の妻や妹たちの意見も取り入れられました。
たとえば、手入れのしやすさ、収納のしやすさ、日常で使いやすい重さなどです。

これは、ものづくりにおいて非常に大切なポイントです。
作り手が「良い」と思うものと、実際に使う人が「使いやすい」と感じるものは違います。

ヒット商品を作るには、技術だけでなく、
実際の生活者の声を取り入れることが欠かせません。

メディア露出と口コミでブランド力が広がった

「かまどさん」は、発売直後から爆発的に売れたわけではありません。
長谷康弘氏は全国を回り、百貨店や展示会、料理関係者などに商品を紹介しました。

その後、料理番組などのメディアで取り上げられたことをきっかけに、
一気に知名度が高まりました。

ここから学べるのは、商品開発と同じくらい
販促活動・PR・口コミづくりが重要だということです。

若い起業家が「かまどさん」から学べる成功戦略

1. 危機の時こそ自社の強みを見直す

長谷製陶は、タイル事業の不振をきっかけに、伊賀焼という本来の強みに立ち返りました。
起業や事業運営でも、売上が落ちた時ほど「自分たちの本当の価値は何か」を見直す必要があります。

2. 伝統をそのまま売らず、現代向けに翻訳する

「かまどさん」は、昔ながらの土鍋をそのまま売った商品ではありません。
火加減の簡単さや吹きこぼれ防止など、現代の暮らしに合うように再設計されています。

伝統や技術は、そのままでは伝わりにくいことがあります。
大切なのは、現代の人が使いやすい形に変えることです。

3. 商品ではなく体験を売る

「かまどさん」が提供したのは、単なる土鍋ではありません。
炊きたてご飯の香り、ふっくらした食感、家族で食卓を囲む時間という体験でした。

起業家は、商品そのものだけでなく、
その商品を使った後に生まれる感情や時間まで考える必要があります。

4. 小さな不満を解決すると大きな価値になる

土鍋炊飯の不満は「面倒」「難しい」「吹きこぼれる」でした。
長谷園はその不満を一つずつ解決し、初心者でも使いやすい商品にしました。

ヒット商品は、特別な発明だけから生まれるわけではありません。
日常の小さな不満を丁寧に解決することで、大きな価値が生まれます。

まとめ|「かまどさん」は老舗企業の再生モデルである

長谷園の「かまどさん」は、伊賀焼の伝統を活かしながら、現代の暮らしに合わせて生まれた炊飯土鍋です。
阪神・淡路大震災後の経営危機を乗り越えた背景には、商品開発だけでなく、
ブランドづくり、販路開拓、生活者目線の導入がありました。

若い起業家がこの事例から学べることは多くあります。
それは、危機の中でも自社の強みを見直し、顧客の不満を解決し、
商品を「体験」として届けることの大切さです。

伝統を守るだけでは、時代に取り残されます。
しかし、伝統を現代に合う形へ変えることができれば、新しい市場を生み出すことができます。

「かまどさん」の成功は、老舗企業だけでなく、これから起業する若い世代にとっても、
大きなヒントになる事例だと言えるでしょう。

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