食品スーパー「アキダイ」を経営する秋葉弘道社長は、その経営者としてのユニークな姿勢で注目されています。アキダイは東京都練馬区を拠点に、厳しい逆境を乗り越え成功を収めたスーパーです。しかし、その道のりは決して平坦ではありませんでした。
アキダイの道のりは
秋葉社長が1992年に開業したアキダイ1号店は、立地条件の悪さと資金不足のため、当初は全く売り上げが立たず、どん底の状態にありました。特に人通りの少ない場所での商売は難しく、開店して間もなく店頭は閑古鳥が鳴くような状況に。お客様が一人しか来ない時間もあり、店舗の前をバスが通るたびに、「あそこはすぐ潰れる」と思われている気がして苦しかったと語っています。
そんな中、彼が踏ん張ることができた理由の一つは、以前他の業界で働いていた経験と、自分が本当に八百屋の仕事を好きで始めたことを思い出したことでした。この覚悟と努力が実を結び、1年間の全力の取り組みで次第に売り上げが回復していったのです。
さらに2023年には、秋葉社長はアキダイの全株式をロピアグループに譲渡し、自身はロピアの青果アドバイザーとして新たな役割に就任。今後は次世代に自分のノウハウを伝え、後継者を育成することにも力を入れています。
アキダイの成功の秘訣
社長である秋葉弘道氏の独自の経営手腕と接客力にあります。いくつかのポイントが際立っています。
1. 接客力と顧客重視の姿勢
秋葉社長は「八百屋の天才少年」と呼ばれるほど、顧客とのコミュニケーションやセールストークに長けています。1日に130箱の桃を売った経験を持ち、来店客一人ひとりに丁寧に対応する接客力が、店舗の信頼を築き、リピーターを増やしていきました。
2. 現場主義と情報収集能力
秋葉氏は仕入れの際、自ら市場に足を運び、天候や産地の状況を踏まえた価格交渉を行っています。また、生産者との強い信頼関係を築き、産地の情報を直接収集し、その情報をメディアや顧客に共有することで信頼性を高めています。この姿勢が、テレビ局などからの取材依頼が絶えない理由でもあります。
3. 苦境を乗り越える忍耐と戦略的転換
アキダイは開店当初、客が来ないというどん底の状態に陥りましたが、秋葉氏は「1年間だけ全力で頑張る」と決意し、辛抱強く営業を続けました。この経験が、同業他社との差別化に繋がり、次第に売り上げを回復させていったのです。また、M&Aを通じてロピアグループ傘下に入り、企業の成長と安定を図った決断も重要です。
4. 地域に根差した経営
秋葉氏は地元のイベントや顧客との関係を大切にし、地域密着型の経営を行っています。これにより、単なる「安売りスーパー」ではなく、地域社会に愛される店舗としてのブランド価値を確立しました。
以上の要素が、アキダイの成功を支える重要なポイントです。秋葉社長の人柄や現場重視の姿勢、そして地域社会との強い結びつきが、同社の繁栄に大きく貢献しています。
ロピアグループの傘下に入った理由は
アキダイがロピアグループの傘下に入った理由は、秋葉弘道社長が「アキダイ=自分」という現状に悩み、会社の将来を見据えての決断です。秋葉氏は長年、アキダイの経営や仕入れなどのノウハウを一人で担ってきましたが、自分が引退した際に会社がどうなるかを懸念していました。特に、若い従業員から「秋葉さんがいなくなったら、アキダイはどうなるのか」という不安の声が出始めていたことが大きなきっかけです。
秋葉氏は後継者の育成が難しいと感じており、会社を守るためにM&Aの選択肢を考えるようになりました。最終的に、従業員の待遇や店舗運営が従来通りに続けられるという条件が合致したことから、2023年に神奈川県を拠点とする「ロピア」の持株会社とのM&Aが成立しました。
このM&Aにより、秋葉氏は「青果アドバイザー」としてロピアグループ内で引き続き活動し、自分のノウハウを次世代に伝える役割を担っています。これにより、アキダイの店舗運営は大きな変化をせず、従業員も安心して働き続けることができる環境が整えられました。
アキダイの未来
ロピア傘下に入ったアキダイは、従来の「地域密着型」の店舗運営を継続しながら、秋葉氏が次世代にノウハウを伝える体制が整えられています。これにより、アキダイは安定した成長を見込めるだけでなく、今後も地域に愛され続けるスーパーとしてのブランドを強化していくことが期待されています。
アキダイの成功は、秋葉社長の接客力、現場主義、情報発信力、そして戦略的な経営判断によって築かれました。ロピアグループへの参加を通じて、さらなる成長と安定を実現し、次世代へのバトンを確実に渡す道を歩んでいます。