升本フーズの成功事例に学ぶ“弱者の戦略”|中小企業が大手に勝つ方法とは?
東京の下町・亀戸を拠点に、無添加で手作りのお弁当を提供している「升本フーズ」。
創業120年の老舗でありながら、ここ数年で売り上げを伸ばしている中小企業の成功事例として、いま多くの注目を集めています。
このブログでは、升本フーズの歩みをたどりながら、「弱者の戦略」という視点で、中小企業や個人ビジネスでもマネしやすいポイントを、30代女性にもわかりやすくご紹介します。
1. 升本フーズってどんな会社?
株式会社升本フーズは、東京・江東区亀戸に本社をかまえる企業です。
割烹料理店から始まり、現在は
- 無添加にこだわったお弁当の製造・販売
- 飲食店の運営
- 社員食堂の受託運営
といった事業を展開しています。
特に近年は、割烹料理店の技を生かした無添加のお弁当が大きな柱となり、百貨店や直営店、仕出し宅配などで、月に15万食ものお弁当を販売するまでに成長しています。
2. 「飲食業なんて嫌だ」から始まった社長の物語
現会長兼社長の塚本光伸さんは、1951年に塚本家の長男として生まれました。
ご両親は亀戸で飲食店を営んでいましたが、幼い頃から働きづめの姿を見てきた光伸さんは、飲食業にあまり良いイメージを持てなかったそうです。
「労働時間も長いし、休みも少ない。給料も良くないのに、何がいいんだろう」
そんな思いから、中学生の頃にはご両親とぶつかり、高校卒業後は家出同然で大阪へ。
「後継ぎにさせられるのが嫌で」、卒業式の翌日に家を飛び出したといいます。
その後、不動産業に携わり、一時は成功しかけましたが、怪しい取引に巻き込まれ、4億円もの借金を背負うことに。
「もう倒産しかない」と覚悟するほどのどん底を味わいます。
そんなとき、意外にも光伸さんを救ってくれたのが、かつて嫌っていた飲食の仕事でした。
知人を通じて店舗運営を任されたり、レストラン経営を委託されたりする中で、少しずつ状況は好転していきます。
3. 飲食業の“光”を見つけた、ある日の出会い
転機が訪れたのは、光伸さんが45歳のとき。
箱根の「ガラスの森美術館」を訪れた際、ある光景に心を揺さぶられます。
それは、料理人やサービススタッフの若者たちが、
イキイキと働き、お客さまが笑顔で帰っていく姿でした。
「飲食にも、人を幸せにする力があるんだ」
そう感じた瞬間、ずっと抱いていた“飲食=つらい仕事”というイメージがすこしずつ溶けていきます。
感動した光伸さんは、ガラスの森美術館を運営する「うかいグループ」の社長に手紙を書きます。
4回目のアプローチでようやく面会が叶い、そのとき、社長から1通の手紙を見せられました。
それは、「自殺を考えていた夫婦が、ガラスの森美術館での体験とおもてなしに感動し、人生をやり直すことを決めた」という内容の手紙でした。
「飲食には、人の命までも救う力があるのか」
その一文を目にした瞬間、「自分は何をやっていたんだろう」と、頭を殴られたような衝撃を受けたといいます。
この出来事をきっかけに、光伸さんは飲食業の“光”を見つけます。
飲食はただつらいだけの仕事ではなく、誰かを支え、幸せにする仕事なのだと気づいたのです。
4. 火災で本店全焼。それでも諦めなかった
本気で家業と向き合うことを決めた光伸さんは、1988年に「株式会社升本フーズ」を設立。
飲食店の多店舗展開や、社員食堂の受託運営などに乗り出します。
しかし、またしても大きな試練が訪れます。
1998年、亀戸本店が火災で全焼してしまったのです。
このとき、会社の存続すら危ぶまれるほどのピンチでしたが、光伸さんはここでも諦めませんでした。
本店を「江戸料理屋 亀戸升本」として再建し、さらに2001年には弁当製造・販売へと大きく舵を切る決断をします。
5. なぜ“弁当”だったのか?弱者の戦略という選択
当時の弁当・総菜市場は、コンビニや大手チェーンが大量生産・低価格で展開する激戦区でした。
中小企業である升本フーズが、同じ土俵で戦っても勝ち目はありません。
そこで光伸さんが選んだのは、あえて逆を行く“弱者の戦略”でした。
● 量ではなく「質」で勝負する
升本フーズのお弁当は、割烹料理の技を活かして、一から職人が手作りします。
昆布・かつお・干し椎茸で丁寧にとった出汁、季節ごとに調整される味、当日焼き上げる玉子焼き、一から作る鶏つくねやかまぼこ…。
量産ではできない、細やかな手仕事が詰まっています。
● あえて「添加物に頼らない」道を選ぶ
升本フーズは、保存料・合成着色料不使用を徹底しています。
最初は「傷みやすい」「臭いがする」などのクレームもあったそうですが、仕込みの順番や冷却方法を何度も見直し、改善を続けていきました。
「自分が食べたいもの、大切な人に食べてほしいものを作る」
このシンプルだけれど強い思いが、商品づくりの軸になっています。
● 売る場所とお客さまを“選ぶ”
売り方でも、升本フーズは大手と同じ道を選びませんでした。
販売先を
- 百貨店
- 直営店
- 仕出し宅配
など、「品質や味を丁寧に選ぶお客さま」が集まる場所に絞ったのです。
「どこにでも置く」のではなく、「わかってくれる人がいる場所」に届ける。
一見すると非効率に見えますが、これこそがブランドを育てる戦略になっていきました。
6. 月15万食のヒットへ。弱者の戦略が実を結ぶ
こうした地道な取り組みの結果、升本フーズの無添加弁当は、「心に残るお弁当」として評価されるようになります。
コロナ禍を経てなお事業は成長を続け、いまでは月に15万食を販売する主力事業へと成長しました。
これは、大手の真似ではなく、自分たちの強みに徹底的に向き合ったからこそ手にした成果だと言えます。
7. 升本フーズから学べる“弱者の戦略”4つのポイント
升本フーズの成功事例から、私たちが学べる「弱者の戦略」を4つに整理してみます。
① 大手と同じことはしない
大量生産・低価格で勝負するのではなく、手作り・無添加・職人技という、真逆の方向へ進んだことが、差別化につながりました。
② 「ここにしかない価値」を磨く
割烹料理の技術、出汁の引き方、無添加へのこだわり、下町の歴史…。
升本フーズは、自分たちが持っている「ここにしかないもの」を、時間をかけて丁寧に磨き続けています。
③ お客さまを“選ぶ”勇気を持つ
誰にでも広く売ろうとするのではなく、
きちんと価値を理解し、価格ではなく「想い」や「品質」で選んでくれるお客さまに向き合う戦略を選びました。
④ 困難を“転機”に変える
借金、家業への嫌悪、本店の全焼…。
何度も大きな試練がありましたが、そのたびに方向転換やチャレンジを行ってきたことが、結果的に今の成功につながっています。
8. 30代女性の私たちにとっての「弱者の戦略」
升本フーズのストーリーは、中小企業や起業家だけでなく、私たち一人ひとりの働き方や生き方にも重なるところがたくさんあります。
- 「誰かと同じ」ではなく、自分だけの強みを大切にすること
- 効率よりも、あえて丁寧さを選ぶ場面があってもいいこと
- 自分を認めてくれる人に向けて、まっすぐ力を注ぐこと
日々の仕事や生活の中で、成果がすぐに見えなかったり、周りと比べて落ち込んでしまうこともありますよね。
そんなときこそ、升本フーズのように「時間をかけて、自分の価値を育てていく」という視点を持てたら、少しだけ気持ちが楽になるかもしれません。
9. まとめ|小さくても、ちゃんと勝てる
升本フーズの成功事例は、「小さくても勝てる」ということを教えてくれます。
- 割烹の技を生かした、職人の手作り弁当
- 保存料・合成着色料を使わない無添加へのこだわり
- あえて量産せず、理解してくれるお客さまに届ける戦略
大手と同じ土俵で戦うのではなく、弱者だからこそできる戦い方を選び抜いた結果、月15万食の人気商品へと育っていきました。
もし今、あなたが「自分は小さいから」「できることが限られているから」と感じているなら、升本フーズの物語は、そっと背中を押してくれるはずです。
「ここにしかないもの」を大切に育てること。それこそが、弱者のいちばん強い戦略なのかもしれません。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
この記事が、あなたの仕事や生き方を見つめ直すきっかけになればうれしいです。

