ワクチン開発の祖パスツールは平凡な評価を受けた学生だった

細菌・ウイルス
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新型コロナウイルスのパンデミックで多くの人々が犠牲になり苦しんでいます。

そんな中メッセンジャーRNAワクチンが開発され多くの人を救っています。

このワクチン開発には、研究者の心血を注いだ奮闘があった成果だと聞きます。

 

ワクチン開発の先駆者といえば、近代細菌学の祖と呼ばれるパスツールです。

彼は病気の原因がまだ明らかにされていなかった時代に大いなる功績を残しました。

 

特に、病気の原因や、食べ物などが発酵(腐敗)する原因が、微生物であることを発見しました。

そして、ワクチンを開発することで民衆を苦難と恐怖から救済しようとしました。

「平凡」なパスツール

フランスで生まれた、パスツールは国家が誇る偉大な研究者です。

しかし、幼少の頃は学校の成績で「平凡」と評価される少年でした。

真面目な性格で絵を描くことが好きな少年でした。

 

パリの学校に通うことになり、ホームシックになり1ヶ月で故郷に戻りました。

それに、彼の理解力は決して早くはありませんでした。

 

しかし、彼は問題を与えられると、完全に理解できないと気がすまない性格でした。

学校の先生にはそれが頑固で理解力が乏しいと写ったようで、評価は中の上くらいです。

学校では「平凡」と思われたパスツールは、偉業を収めることができました。

 

偉業を成し遂げた根本は何だったのでしょうか。

それは、パスツールの3つの研究姿勢にあるといわれています。

パスツールの研究姿勢

 

1、「民衆の理解を得るためにどこまでも取り組んだこと」

2、「研究を通じて民衆が抱える問題を解決しようと試みたこと」

3、「日々の研究努力の積み重ねを大切にしていたこと」

 

一つ目「民衆の理解を得るためにどこまでも取り組んだこと」

 

パスツールの研究成果を、全ての科学者や人々が受け入れたわけではありません。

よく思わない人達から、やっかみや反論を受けることも多々ありました。

そんな時でも、さらなる研究によって証明をして、反対論を迎え撃ちました。

 

「白鳥の首フラスコ」を作った時

スープなどの食料が腐敗するのは、空気中を漂う微生物が原因である。

その微生物がスープの中に入って腐敗すると、パスツールは論文で発表しました。

 

しかし、批判的な科学者から非難されることになります。

当時(19世紀)はまだ、微生物は腐ったものから自然発生するという説が依然残っていたからです。

スープを煮沸し、空気に触れない状態に置けば、腐敗は起こりません。

 

それは「空気中の微生物が、スープに入らないから、スープは腐らないのだ」と、

パスツールには分かっていました。

 

しかし、アリストテレスの時代から信じられていた自然発生論による意見は違います。

彼らは、「空気中には、泥や汗などの無生物を生物に変える『生命の素』が浮遊している。

その『生命の素』がスープに触れると、スープ中に微生物を産む」と主張します。

 

つまり、「空気に触れなければ、スープに微生物は発生しない」という、同一の現象ですが、

パスツールと彼らの意見は、真っ向から対立していたのです。

 

微生物が「自然発生」で生まれるのではないことを、「白鳥の首フラスコ」で証明しました。

彼は、「白鳥の首フラスコ」と呼ばれる、異様な口先のフラスコを作りました。

フラスコの首の部分が白鳥の首のように非常に細く、S字に曲がった管となっているのです。

 

フラスコの首は、塞がれてはいないので、外気は自由に行き来します。

しかし、微生物はフラスコのS字の口先に溜まり、フラスコ内部のスープまでたどり着けません。

 

『生命の素』によって自然発生するという学者の見解が正しいなら、

外気が自由に入れるこのフラスコ内のスープにも、微生物は発生するはずです。

しかし、この方法で約1週間放置しても、スープは腐敗することはありませんでした。

 

白鳥の首フラスコはこんな形

 

炭疽(たんそ)症のワクチンを証明

炭疽(たんそ)症のワクチンを証明する時も、努力を惜しみませんでした。

パスツールは炭疽菌のワクチンを開発した時も、わかりやすい証明に努めました。

炭疽菌とは、土壌の中に生息する常在細菌、つまり何処にでもいる細菌です。

 

ヒトや家畜を問わず感染力が高く、とても危険な細菌なのです。

たとえば、ペストやエボラ出血熱に匹敵するほどの危険性を持っています。

 

第二次世界大戦後には、生物兵器として培養されたこともあるりますが、今は禁止されています。

最初に炭疽菌が炭疽症の病原体であることを証明したのは、ドイツの細菌学者コッホです。

しかし、まだ具体的な解決方法は見つかっていませんでした。

 

パスツールは、炭疽症への防御策を見つけるべく研究を始めます。

彼はニワトリのコレラを研究していた際の成果を応用します。

培養して、毒性が弱める方法を炭疽症にも活用したのです。

炭疽菌は42℃の培養基に入れておくと、次第に毒性が弱くなることがわかりました。

毒性が弱くなった炭疽菌をヒツジに接種し観察を続けます。

 

すると、軽い症状が現れることがあっても、やがて快復しました。

その後に強毒性の炭疽菌を投与しても病気は悪化しませんでした。

1796年にエドワード・ジェンナーが種痘法を確立します。

しかし当時は、どういう仕組みで免疫を獲得できるのかわかっていませんでした。

そこからワクチンのメカニズムを大きく前進させたのがパスツールです。

 

弱毒化した微生物を接種することにより、免疫を得ることができると発見しました。

しかし、疑ってかかる者も少なくありませんでした。

 

公開実験

新聞社から公開実験を求める記事が出されました。

断れば好きなように書かれるので、パスツールは公開実験を受けて立ちます。

 

公開実験の概要は下記のものです。🔽

提供された複数のヒツジを3グループに分け、数日間かけて実験を行いました。

Aグループには、ワクチンを接種した後、強毒性の炭疽菌を打ちました。

Bグループは、ワクチンを投与せずに炭疽菌を注入しました。

Cグループは、比較のため、ワクチンも強毒性の炭疽菌も打たず、そのままにしました。

 

その結果、

Aグループのヒツジは、強毒性の炭疽菌を打たれても相変わらず元気でした、

Bグループは息が絶え絶えになっていました。

Cも問題なく元気にしている

これで、明らかにワクチンの効果が表れているのが証明されたのです。

実はこの十四年前に、パスツールは脳出血を患いました。

それからは半身不随の状態で研究を続けていたのです。

それでも、自ら公開実験の農場に足を運び、助手たちと共に実験を成功に導いたのです。

 

2つ目は、「研究を通じて民衆が抱える問題を解決しようと試みたこと」

 

パスツールが研究し発見したものは、特定の分野にフォカスしたものではありません。

研究のきっかけは、民衆から問題を解決してほしいと要望があったからです。

 

また、パスツールは愛娘三人を亡くしています。

その内の二人が、腸チフスという感染症で亡くなっています。

家族の不幸が、より研究を徹底して進める原動力となったのでしょう。

 

パスツールは、低温殺菌法によって商品の供給を安定化させることに成功しました。

ビールやワイン、牛乳などの腐敗を防止にパスツールが生み出した低温殺菌法が行われています。

 

フランスではワインの製造が盛んです。

当時醸造する際の約半数のワインが途中で酸味が強すぎて販売できなくなっていました。

酸味の強いワインは捨てざるを得ず、大きな損害となっていたのです。

 

パスツールは醸造業者からワインが酸っぱくなってしまう原因究明の相談を受け研究します。

そこで、アルコール発酵中に、丸形の微生物(酵母菌)と棒状の微生物(乳酸菌)を見出します。

 

順調に発酵したワインには丸形の微生物(酵母菌)が確認できました。

酸っぱくなってしまったお酒には、棒状の乳酸菌が存在しています。

酸っぱくなる原因がこの乳酸菌であることを突き止めました。

 

乳酸菌がお酒の醸造過程で侵入してしまったのが酸っぱくなる原因でした。

そして、乳酸菌を増やさないようにする予防策を考え出しました。

 

摂氏60度まで液体を熱しても、酵母菌は生き残ります。

しかし、乳酸菌は生命活動を停止することがわかりました。

こうして美味しいワインを安定して供給できるようになったのです。

 

※日本の酒造りでは、パスツールの発見より三百年前に、「火入れ」という類似した殺菌法が経験的に生み出されていました。

「見えない敵」である狂犬病との闘い

パスツールは、病気の分野にまで研究を進めていくようになります。

その一つが、「見えない敵」である狂犬病との闘いです。

 

狂犬病は、発症すれば致死率ほぼ100%の恐ろしい感染症です。

発症後の有効な治療法は、現代においてもまだ見つかっていません。

19世紀にはヨーロッパ全体、殊更にフランス、ドイツ、イギリスで多発するようになったのです。

 

狂犬病は狂犬病ウイルスによる感染症です。

そのため、細菌より微小な狂犬病ウイルスを発見することはできませんでした。

 

パスツールは見えない敵と闘うことになるのです。

しかもそのウイルスは、何日経っても毒性が弱まりませんでした。

壁にぶち当たりますが、助手たちが有効なる手立てを見つけるのです。

 

それは、狂犬病にかかったウサギの脊髄液を、日光で十四日間、自然乾燥させることで、

ウイルスの毒性が弱まることが発見されたのです。

 

この発見を元に、毒性の弱いものから強いものへと、ワクチンを順番に犬へ投与していきました。

その結果、その犬が狂犬病にかからないことを確認できたのです。

犬の体では成功したが、人体だとどうなのか課題が残ります。

 

その矢先、狂犬病の犬に噛まれた子供が母親に抱えられてパスツールのもとを訪ねました。

その母親の「どうか息子を救ってほしい」という必死の願いです。

 

パスツールは、まだ人体への効用が定かではないワクチン投与を決意します。

パスツールは医師に立ち会ってもらいながらワクチン接種を試みたのです。

その結果、その子供は狂犬病を発症することがありませんでした。

 

この時も、批判する新聞社や科学者、中傷の手紙を送る者もいました。

しかし、イギリスの権威ある医学研究団体から認められることで回避していきました。

 

3つ目は、「日々の研究努力の積み重ねを大切にしていたこと」

 

研究過程での、些細なことやひらめき、人の支えが発見につながっています。

ブドウ酸の研究で、ふとしたひらめきから化学物質を分割する方法を発見します。

ニワトリのコレラ研究でも、捨てずに置いていた古い培養液が、ワクチン開発につながったのです。

 

狂犬病の研究では助手たちの研究が突破口を開きました。

パスツール自身は「準備をしっかりしたものにのみ、チャンスが訪れる」と言い残しています。

 

パスツールや助手たちは、たまたま運良く細菌を発見できたのでしょうか。

それは、発見に至るだけの努力を普段から積み重ねる姿勢が発見を呼び込んだのです。

パスツールの研究姿勢は、目標を立てると、成果が出るまで徹底的に追求するところです。

まとめ

経済学者のドラッカーも、著書「マネジメント 基本と原則」で言っています。

「成長には準備が必要である」

「準備ができていなければ、機会は去り、 他所へ行く」と述べています。

 

まさに普段の取り組みの積み重ねがとても大事だと、パスツールは教えてくれたいます。

強い志を持ち、行き詰まって葛藤し、その時のひらめきが成功に導くのかも知れません。

まず、そのためには自分を磨くことですね

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